LOHAS

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【コラム】凹みのある日常。

2018.12.23

私の生まれた町は、四国のいわゆる、田園風景の中にあります。

 

 

ある日の午後。

里帰り中の私は、近所を一人ゆるゆると、愛犬を連れ散歩をしていました。

 

小さな頃に通い慣れた道。それは車1台がやっと通れる程度の狭くて小さな畦道。

歩いていると、草木の香りだけで当時の記憶が蘇ってきます。

誰にでもきっとある、「私の故郷はここなんだ。」と思わせてくれる場所。私にとって、この道がそうです。

 

そこかしこと駆け回る愛犬を横目に、あの頃より緑が少なくなった畦道に、私はなぜか少しおセンチになりながら、思わず辺りをぐるーっと見渡しました。

おセンチになる理由は一つ。

目の前に広がる穏やかな田園風景は、幼少の頃に見た景色とほとんど変わりません。けれど道草をしながら摘んだ花の種類はいつのまにか減っていて、そしてデコボコだった道路の凹みは、近年の舗装工事で、明らかに綺麗になっていたのです。

 

わかっています。もちろん道はなるべく綺麗な方が便利ですし危険もないのです。

しかしなんというか、味わい深くないのです。

 

道路の凹みは、子供の私にとって最高の遊び場でした。

夏の日には、近くの川ですくってきたメダカを入れて、私たちだけの自然の水槽を作りました。

雨の日の水溜まりは、寒い日には小さな小さなスケート場になりました。

 

私はいつのまにか無意識に、凹みを探し始めていましたが、先に発見したのは、愛犬の方でした。覗き込むと、ピンと張った雨水に、私と愛犬と、空の青が写っています。

あぁ、なんて素敵な日常の一コマ。

 

「おぉ・・・おぉ?あれ?・・なんだか私、シワが増えたなぁ。」

 

広大な緑をバックに、ついどうでもいいことを呟いてしまった私。

愛犬が前足でその水たまりに少し触れたせいで、自分の顔がゆらゆら揺れました。

(これはきっと、水面のせいだ。しわじゃない。)

 

「こんにちは!!!」

 

突然の大きな声に驚いて振り向くと、ヘルメットをかぶった知らない小学生の男の子が、自転車に乗ったまま、私が覗き込んでいた水たまりに目をやりました。

 

「ん?あ、こんにちは!」

「何かおるん?」

「あ、いや、なんかおったらええなーって思って。でもおらんかった!」

「そうなんや、さよーなら!!」

「あ、うん、さよう・・」

言い終わる前に彼は、全速力でペダルを踏み、サーっとその場を去って行きました。

 

痺れるほど気持ちの良い挨拶をしてくれた彼に、まさか「道路の凹みを見つけて、鏡がわりにシワのチェックをしていたのよ」と言えるはずもありません。

いや誰も、懐かしの田園風景でこんなこと、考えないでしょう。そうでしょう。

 

けれど気づいたのです。

顔だって道路だって時間が経てば、凹むものは凹むのです。さらに顔は、塗装工事のように簡単に治せるわけじゃないのです。(治せるものもあったりしますが。)

 

あぁ。なぜ私の思考は、こんなに優しい風景の中で、こんなにくだらないことを考えてしまうのでしょうか。その割に、お手入れはかなり簡易的なのに。

 

少し考えてみました。

道路一つをとっても、綺麗すぎると味わい深くないと思ったように、顔のシワだって、時間を重ねるときっと素敵です。ぴーんと塗装されてような顔をしていたら、寂し・・・くはないですが、自然な変化が一番です。

 

散歩から家に戻り、冷蔵庫を開けました。

「保湿、保湿・・・」

オルフェスを手に取り、顔にぺたっと貼り付けます。

 

犬の散歩から帰ってくるなりパックをする私。

田舎の道路の凹みから自分のシワを気にし始めるなんて、世界で私だけかもしれません。

 

だけど仕方ないのです。

やはりまだまだ私は、味わい深いお顔を迎えいれるより、もうしばらく凹みのないお肌でいたいのですから。

 

WRITER

叶 望実

7年間のヘアメイク経験ののち、 現在は美容クリニックのカウンセラーとして10数年勤務。

これまで約3万人以上の女性のお肌と向き合ってきており、『絶対に切らない美容』というコンセプトを胸に、ドクター達と共に『効果のあるアンチエイジング治療』 を追求。

ヘアメイクから転身したきっかけは、自身の肌荒れと同じ時期に、担当した美人女優さんのお肌がボロボロに荒れ、回復まで関わる日々の中で『隠す美容から治す美容』に興味を持つ。

美しいメイクは、きめ細かい素肌があってこそ。

自身のケアは『効果の高いものをシンプルに取り入れる』を基本としている。

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